材料勘定の経理処理を説明する~総平均法と予定単価の使用~

今回は材料の経理処理について説明します。工業簿記ではおなじみの処理となりますが、実務では材料の種類が数百、数千点あることも珍しくない中でどのように処理をしているのか解説していきます。

在庫については、業種によって処理の仕方が異なってくることでしょう。今回の例は1つ1つを数えられる物品(ネジとかPCのパーツなど)を対象とします。液体(薬品、油など)や気体(天然ガス他)など重さで在庫を測るような棚卸資産は対象外とさせてください。そのような在庫の扱いの経験が私にはありません。

在庫の経理処理

在庫管理システムを使用していれば材料1種1種に型番などの情報が登録されているはずです。予定価格はその在庫の種類ごとに登録していきます。予定価格は購買部門など(経理以外の部門)が市場価格の予測などを行いながら適正な価格を決定します。

経理部門が予定価格を決めることができない理由は、利益操作を防ぐことにあります。予定価格を動かすということは、在庫残高と売上原価を動かすということであり、つまり損益を決定することになります。経理が予定価格を決めると確実に自分たちの都合の良い損益を作り出すことになります。

材料消費価格差異

材料の計上仕訳は購入価格で行われます。例えば材料Aを1個当たり95円で100個購入した場合の仕訳は次の通りです(消費税は省略)。

<仕訳>
日付 科目 借方金額 貸方金額 摘要
12/31 材料 9,500 X社材料購入
買掛金 9,500

材料の在庫残高は月別総平均法を使って評価するとします。材料Aは当月期首時点で、単価@100円が100個(10,000円)あったとします。追加購入した9,500円を考慮すると月末の総平均単価は@97.5円となります。

当月は製品Xを製造するため材料Aを150個使用したとします。予定価格が設定されていない場合の仕訳は次の通りとなります。

<仕訳>
日付 科目 借方金額 貸方金額 摘要
12/31 仕掛品 14,625 材料費仕掛計上
材料 14,625

予定価格が@100であった場合はどうでしょうか。この場合、材料消費価格は@100となるため仕掛品計上額は15,000円となります。
一方、材料Aの単価は総平均法による@97.5のままであるため、仕掛計上額15,000円と材料勘定14,625円で差額が発生してしまいます。この差額375円は原価差額として処理します。

<仕訳>
日付 科目 借方金額 貸方金額 摘要
12/31 仕掛品 15,000 材料費仕掛計上
材料 14,625
原価差額 375

月末残高は次の通りとなります。

期首残高 100個 @100 10,000円
当月購入 100個 @95 9,500円
当月使用 150個 @97.5 14,625円
期末残高 50個 @97.5 4,875円

注意してほしい点は、当月使用と期末残高の単価は総平均単価@97.5となる点です。月別総平均法を使用する場合、期首残高と当月購入高により総平均単価が決まり、それを当月使用額(仕掛計上分)と期末残高に按分する形となります。従って当月使用と期末残高は必ず同じ単価になります


当月使用の金額が求まると今度は、予定使用額との金額比較が行われることになります。そして、当月使用額と予定使用額との差額375円は原価差額(有利差異)として処理されます。有利差異とは、予定では15,000円の材料費が必要だと想定していたのが、14,625円と予定より安く済んだため差額を利益計上するからです。

材料が何種類もある場合

以上の話は簿記の教科書にも載っている基本的な総平均法や材料消費価格差異になりますが、簿記の試験時間の兼ね合いもありどの例題も1種類しか在庫が存在しない形になっていますが、実務では何百、何千種類の在庫を扱わなくてはなりません。下図は6種類の部品があった場合の在庫残高管理表になります。

              期首単価 購入単価 期末単価 期末単価
品名 期首
単価
期末
単価
期首
数量
増加
数量
減少
数量
期末
数量
期首金額 増加金額 減少金額 期末金額
A 100.00 97.50 100 100 150 50 10,000 9,500 14,625 4,875
B 123.00 123.47 65 20 58 27 7,995 2,500 7,161 3,334
C 50.00 62.93 90 43 89 44 4,500 3,870 5,601 2,769
D 33.33 39.34 444 471 808 107 14,799 21,195 31,784 4,209
E 90.50 94.27 506 333 459 380 45,793 33,300 43,270 35,823
F 220.00 206.71 222 440 47 615 48,840 88,000 9,715 127,125
    1,427 1,407 1,611 1,223 131,927 158,365 112,157 178,134

総平均法を用いる場合、期首単価、購入単価、期末単価の3種類の単価情報が必要となります。この内、期首単価は前月時点の期末単価と同額であり、期末単価は以下の式により算出されます。
期末単価=(期首金額+増加金額)/(期首数量+増加数量)
従って、購入単価だけが未知の情報として当月あらたに必要となる情報です。この情報は購買システムなどから在庫管理システムに連携して登録されることになるでしょう。

さらに予定単価も設定されているとします。原価差額の計算は次の通りとなります。

品名 予定単価 減少数量 減少金額 仕掛計上額 原価差額
A 100 150 14,625 15,000 375
B 120 58 7,161 6,960 -201
C 55 89 5,601 4,895 -706
D 40 808 31,784 32,320 536
E 90 459 43,270 41,310 -1,960
F 225 47 9,715 10,575 860
  1,611 112,157 111,060 -1,097

原価差額のプラスは有利差異、マイナスは不利差異をあらわします。実務でもこのような表を作成して、どの材料でどれだけの原価差額が発生しているのか確認します。原価差額トータルでは小さな金額だったとしても、明細レベルで見ると極端に大きな値とマイナスの値が相殺されている可能性もあります。原価差額が極端な値となっていた場合、登録データのミスの可能性があるため内容を確認するなどの行為が必要となります。

問題がなければ仕訳を一気に作り上げます。

<仕訳:材料購入>
日付 科目 借方金額 貸方金額 摘要
12/31 材料 158,365 X社材料購入
買掛金 158,365
<仕訳:材料費仕掛計上>
日付 科目 借方金額 貸方金額 摘要
12/31 仕掛品 111,060 材料費仕掛計上
原価差額  1,097
材料 112,157

まとめ

在庫の経理処理では種類の異なる単価がいくつも出てくるので、それぞれを混同せずに理解していくことが重要です。実務では多くの場合、今回示した表まで自動で作成してくれることになりますが、その内容を理解しておかないと、おかしな結果が出てきた時に原因を特定することが困難になります。システムに任せっきりにせず、中のロジックまで見て理解して作業を行うことが重要だと思います。