前払費用をExcelで管理するコツ

どんな会社でも前払費用は発生しているでしょう。
その費用をどれだけ繰延処理しているかどうかは、会社の規模によってさまざまだと思います。

小規模の会社の場合、法人税法の基本通達である短期前払費用(参照:No.5380 短期前払費用として損金算入ができる場合)の制度を利用して繰延処理はほとんどしていないのではないでしょうか。

大企業であっても税務上認められる前払費用は積極的に一括費用計上しているはずですが、予算の達成具合との兼ね合いで敢えて繰延処理をすることもあったりします。

前払費用の償却方法

前払費用の計上自体は経費などの仕訳と同じです。

<仕訳>
日付 科目 借方金額 貸方金額 摘要
1/15 前払費用 500,000 会計ソフト保守料1月~4月
仮払消費税 40,000
未払費用 540,000

一方、前払費用の償却は、開始月から終了月まで毎月一定額を費用計上する処理となります。
月中からサービスの提供などを受ける場合でも月初から始まったとみなして、開始月は1か月分の費用計上を行います。
支払月から償却するのではなく、あくまでサービスを受ける契約期間に基づいて償却することになるので、この点は注意してください。

<仕訳>
日付 科目 借方金額 貸方金額 摘要
1/31 修繕費 125,000 会計ソフト保守料1月分
前払費用 125,000

償却方法は、固定資産の定額法(残存価額がゼロの場合)による償却と同じ方法になります。
前払費用の償却を固定資産システムのようなシステムで計算するのが最も早くて確実なのですが、前払費用のためのパッケージソフトを販売している企業の話は聞いたことがありません。
すると必然的に手作業となります。Excelの登場です。

Excelで償却予定表及び残高管理表を作成する

Excelで作る償却予定表及び残高管理は次の形がよく見られます。

以下、この表の作り方を説明して行きます。

各項目名の入力

1行目の「摘要」から「月額」までは文字なので、手で入力していきます。
その隣の12月も日付(2016/12/31)を手入力していますが、1月から4月は関数を使って自動入力にしています(下図を参照)。

EMONTHは指定した月数後(もしくは月数前)の月末の日付を求める関数です。

書式:EOMONTH(開始日, 月)

つまり、EMONTH関数の開始日に12月のセル(G2セル)を指定し、関数の次の引数に1を指定すると、12月の次の月である1月の末日が計算されます。
H2セルに表示されている“1月”は内部的には2017/1/31の値となっています。

償却額の計算式

償却額の計算式は次の条件に従って計算しています。

  • 開始月(C列)以前ならば、その月の償却額は表示しない。
  • 開始月(C列)以降かつ終了月(D列)以内であれば月額(F列)の償却額を表示する。
  • 終了月(C列)以降ならば、その月の償却額は表示しない。

この条件を数式に反映させるため、IF関数とAND関数を組み合わせて式を作成しています。
具体的な数式は下図の通りです。

AND($C3<=H$2, H$2<=$D3) は、12月が開始月と終了月の範囲に入っているかチェックしています。
もし範囲に入っていれば、F3セル(月額償却費)を表示し、そうでなければゼロを表示するようにIF関数で制御しています。

各セルの番地に$マークがついているのは、数式をコピー&貼付けした際に参照セルがずれないよう固定するためのマークとなります。
12月のセル(H3セル)に数式を入力した後、H3セルをコピーして1月~4月まで選択し張付ければ償却予定表が完成します。

残高管理表の計算式

前払費用をExcel管理する場合、償却予定表だけでなく残高管理表も必ず作成し、毎月の決算で帳簿残高と管理表の金額が一致していることを確認しましょう。

残高管理表は、通常は償却予定表の下ではなく右側に作るか、同じExcel内の別シート作ることになります。理由は、明細が増えていくと償却予定表が下に伸びていくため、下に残高管理表があると邪魔になるためです。
今回の図は解説ペースの都合のために償却予定表の下に残高管理表を作成していますので、この点は表を作成する際に注意してください。

各月の残高は次の条件に従って計算しています。

  • 計上月よりも前の月は、残高はゼロとする。
  • 計上月よりも後の月は、前払費用の満額(F列)から開始月から当月までの累計償却額を引いた額を残高とする。

この条件を反映した式が下図の中に記載されています。

I$10<$C11により、12月が計上月(201701)よりも前の月なのか後の月なのかをチェックしています。
もし、前の月であればゼロ、後の月ならば償却額を考慮した残高を算出します。

端数は手修正

以上の通りに償却予定表と残高管理表を作成した後、いざ実際のデータを入力してみると、下図のように残高管理表に償却しきれない(あるいは償却超過となる)端数が生じてしまいます。

端数が出ないように数式で調整することも可能ですが、そこまで考慮すると複雑な式になってしまうので、この程度であれば手で調整するようにしましょう。
調整するときは、残高管理表の値を動かすのではなく償却費で調整するようにしてください
例えば上の表では、保険料Bの4月の残高が1円残ってしまっているので、4月の償却額を1円増やすように手修正を入れます(下図参照)。

残高管理表の最終月を見て、明細のすべてがゼロとなっていれば正しく償却されていることになります。

まとめ

前払費用のExcelを使った償却及び残高管理方法について見てきましたが、上で説明したExcelの形は他の経理処理で役に立ちます。
例えば、前受収益(又は契約負債)についても同じ形の表で管理することができます。
費用の繰延が収益の繰延に変わっただけで、計上パターンは同じなのでそのまま流用することが可能となるわけです。
収益を繰延べるパターンは特定の業種でしか発生しないため、人によっては全く関わることがないかもしれません。
もし前受収益が発生するようなら今回の表と同じようにExcelを使って管理してみてください(会社によっては数千件を超える前受案件があるかもしれません。その場合は、Excelを捨ててシステム化に取り組んだ方が良いと思います)。