製番を使った個別原価計算を説明する

製番(せいばん)は、主に日本の製造業で使われている生産管理方法の一つです。主な使用用途は、製番に製造原価を紐付け原価管理に役立てることにあります。会社によって呼び方が違う場合もあり、私が知っている限りでは他に「作番(さくばん)」や「工番(こうばん)」が同じ意味で使われています。

個別原価計算を行う昔ながらの製造業では必ずこの手の管理方法が使われているわけですが、簿記や原価計算の教科書でその名称を見たことがありません。
そのため、製番を自分たちの会社独自の管理方法だと思っている人も多いようですが、広く一般的に使われているものです。

今回はこの製番とそれに関連した経理処理について説明します。

製番を使った個別原価計算

製番の使われ方は各社さまざまで、こうしなければいけないといった決まりもないため説明が難しいところです。
原価計算に関わらず、特定の費用や損益を個別に管理したい思えば製番を発行すればいいわけです。例えば、研究開発費の集計単位、特定商談の営業費用の集計や予算の集計にも製番を使用することがあります。

ここでは最も一般的な受注生産の商談での製番の使われ方を見て行きます。

受注時

話は営業が商談を獲得したところから始まります。受注した段階で営業(もしくは営業サポート部門)がシステムに商談登録を行い、製品の手配指示を出したタイミングで製番が発行されます。製番はシステムによる自動採番の場合もあれば、経理部などが過去に使用した番号と重複しない番号を探して発行する場合もあります。

ここでは、製番:1234が発行されたと仮定します。

製造原価計算-材料費

手配がかかると次は製造現場で材料の調達が行われます。購買部門では材料を注文するため購買システムへ登録する際に必ず製番を入力します。これにより材料費が製番1234と紐付くことになります。

<仕訳>
日付 科目 借方金額 貸方金額 摘要
11/30 直接材料費 500,000 X社材料費購入
仮払消費税 40,000
買掛金 540,000

あるいは、材料は既に倉庫にあり、倉庫から材料を払い出すこともあるでしょう。倉庫から払い出す際は在庫システム上で製番1234を紐付て払出データを登録することになります。
その時の仕訳は次の通りです。

<仕訳>
日付 科目 借方金額 貸方金額 摘要
11/30 直接材料費 500,000 材料払出
材料 500,000

今回は、上2つの経路で材料が使用されたとします。

<仕訳>
日付 科目 借方金額 貸方金額 摘要
11/30 仕掛品 1,000,000 仕掛品計上 直接材料費
直接材料費 1,000,000

※材料費の仕訳を仕掛品勘定へ直接計上するのではなく「直接材料費」勘定を通して計上したのは、仕掛品勘定を見やすくするためです。「直接材料費」勘定を使わなかった場合の勘定連絡図を見てください。この時、仕掛品勘定の借方には材料と買掛金が記載されますが、中身は両方とも材料費です。
さらに外注費も買掛金から直接仕掛品へ計上してしまうと、仕掛品の総勘定元帳を見ただけでは材料費や外注費の金額が分からなくなってしまいます。

このような事態を避けるため「直接材料費」勘定を使用しています。

製造原価計算-外注費

外注費は製造業では外部に材料の加工や製造工程の一部を依頼したときに発生する科目です。システム構築の現場では外部の協力会社に支払う費用として外注費を使います。

外注費は材料費と違い在庫はありませんので、仕訳の相手科目がほとんどの場合、買掛金となるでしょう。支払依頼システムや購買システムなどで外注費の製番1234を登録します。

<仕訳>
日付 科目 借方金額 貸方金額 摘要
11/30 外注加工費 800,000 Y社外注費
仮払消費税 64,000
買掛金 864,000
<仕訳>
日付 科目 借方金額 貸方金額 摘要
11/30 仕掛品 800,000 仕掛品計上 外注加工費
外注加工費 800,000

製造原価計算-加工費

労務費は加工費に含めて配賦することにします(以下の太字参照)。

<原価計算基準三四 加工費の配賦>
個別原価計算において,労働が機械作業と密接に結合して総合的な作業となり,そのため製品に賦課すべき直接労務費と製造間接費とを分離することが困難な場合その他必要ある場合には,加工費について部門別計算を行ない,部門加工費を各指図書に配賦することができる。部門加工費の指図書への配賦は,原則として予定配賦率による。予定加工費配賦率の計算は,予定間接費配賦率の計算に準ずる。

よって、残りの製造原価はすべて加工費として製番別に配賦を行います。配賦は製造現場の作業者の工数を元に予定配賦します。配賦率は1時間当たり3,000円とします。
工数集計システムより下図の結果が集計されました。最終行に製番別の加工費を計算しています。

ここでの仕訳は製番1234だけとします。

<仕訳>
日付 科目 借方金額 貸方金額 摘要
11/30 仕掛品 1,200,000 仕掛品計上 製造間接費
製造間接費 1,200,000

以上で製番1234の製造原価が集計されました。

まとめ

製番1234の仕掛残高は次の通りとなります。

購買システムより
  材料費 500,000
  外注費 800,000
在庫システムより
  材料費 500,000
工数集計システムより
  加工費 1,200,000
3,000,000

以上が製番を使った個別原価計算です。システムに都度、製番を入力する点がポイントとなります。このように書くと簡単に見えますが、実際に仕組みを導入しようとすると各担当者へ製番入力をお願いしたり、製番を保持できるシステムに変更したり、費用計上を行う際に製番の入力漏れがないか確認したりするなど、かなりの労力が必要となります。

個別原価計算は集計に手間がかかりますが、計算ロジックがシンプルなため分かりやすく原価管理に有用です。見込み生産を行っている業種でも、ロット単位に製番を取って個別原価計算を行っている会社はたくさんあります。高度な原価管理を行うためにはまず製番を使った個別原価計算を行うのが良いのではないでしょうか。

私が読んだ原価計算の本の中で一番実務に近い書き方をしていた本がこちらです。簿記2級を勉強した後に読むと実務での原価計算がどういったものかよく分かります。少し古い本ですが読んでみることをお勧めします。

原価計算で定番の教科書と言えばこちらですが、私は読んだことがありません(スミマセン)。工業簿記2級レベルを身に付けておけば実務的に困ることはないかと思いますが、興味を持った方はチャレンジしてみてください。