経理部の新人は何を学べばよいか書いてみた

今回は経理部に配属された新人が何を学べばよいのかについて書いてみました。
入社したての頃は、やる気に満ち、高い学習意欲がある状態です。
しかも本格的な仕事はまだ任されていないため、時間的な余裕もあります。
この期間にしっかりと勉強をして、すぐに戦力になれるようにしましょう。

何を学ぶべきか

経理だからと言って簿記だけを勉強していれば良いわけではありません。
会社のビジネスを知らなければ、仕訳を1つ作ることすらできないでしょう。
以下、私が考える新人が学ぶべきことを学習優先度の順に挙げてみました。

簿記

先ほど、簿記だけを勉強するのは間違いだと書いたばかりですが、そうは言ってもこれを知らなければ話になりません。
基本的な用語を理解するのはもちろんのこと、借方に資産勘定があれば資産の増加を意味し、逆に貸方にあれば資産の減少というのは見た瞬間、認識できる感覚を身に付けるまでにはなって欲しいと思います。
でもこれは、そんなに難しい事ではありません。
1年もすれば誰でもできています。

簿記はとりあえず2級まで必要です。1級まで取得している人はあまり見かけません。
転職の必須要件として2級以上の資格が求められることが良くあるので、そのためにも2級まで取得してください。

簿記のテキストは本屋に行って自分の気に入ったものを買えばよいと思いますが、私はこのシリーズが分かりやすくて好きです。勉強するなら必ず問題集も一緒に買いましょう。


Excel

Excelの基本的な使い方ができていないと仕事をこなす量が増えないため成長スピードが遅くなります。
最低限のショートカット、基本操作(値貼付け、行・列のグルーピング、絶対参照:セル指定時の$マークの付け方、他)、ピボットテーブルの使い方などは早い段階で身に付けておくべき技術になります。

簡単なExcelの使い方を以下で説明していますので見てください。
経理が覚えておくべきExcelのショートカットキー

自社のビジネス

自分の会社が何をしている会社なのかある程度理解して入社しているはずですが、細かいビジネスの内容まではよく知らないはずです。
どんな会社であれ、仕入活動と販売活動はあるので、この会社は何を仕入れ、何を販売しているのかを学ぶべきです。
また、仕入れから販売までのプロセスも押さえておきましょう。

一度にすべてを理解することは難しいので、まずは自分の担当する事業部や関心のある製品について学習するとよいでしょう。

業界のビジネス

自社が属している業界のビジネスを理解することも必要です。
業界の標準的なビジネスモデルはどういったものか、大量仕入れ、大量販売の傾向があるのかそれとも1つ1つが金額の大きなものなのか。
業界のトップはどの会社なのか、そこはどのような戦略をとっているのか。

このような情報は経理の仕訳に直接関わってくることはありません。
しかし、広い視点で仕事を考えたとき業界の情報が役立ちます。
例えば、業界は今、成長期なのか、安定期なのか、衰退期なのかは直接仕訳には影響しませんが、成長期ならば新しい案件が次々と経理に舞い込んできて忙しい日が続くでしょう。
また、衰退期ならば費用抑制のために分析資料を何度も作らされるかもしれません。

何となく指示され対応している仕事が、実は業界の動きと大きく関連しているというのは良くあることです。
視野を広げるためにも所属している会社の外の動きも眺めてみてください。

会計

簿記を勉強していれば基本的な会計の知識も一緒にある程度は身に付きます。
例えば、私の手元にある簿記の教科書でも売上計上基準や棚卸資産の評価方法などは、簡単ではありますが解説されています。

簿記は帳簿を作る技術、会計は簿記の元となる理論(なぜそうするのか、そう考えるのか)くらいの認識を持っていればいいと思います。

有名な会計の教科書を1つしっかり読んでおけばとりあえず基礎知識としては十分ではないでしょうか。
その後は、実務で問題が生じるたびに会計監査六法で確認していけばよいでしょう。
普段から実務で接していない会計処理は、あっという間に忘れてしまいます。
全てを覚えきるのではなく、問題が生じたときに何を参考にすればよいのかが分かっていることが重要です。

最新の会計基準の動向を認識しておくことも重要です。
毎年次々と新しい会計基準が生み出されているので、その対応にはかなりの労力が必要となります。最新動向を掴み早めに新基準に対応できれば苦労も減るはずです。

会計の本を一冊挙げるならこちらです。定番ですが経理をやるなら一度くらいは目を通しておきましょう。

会計の最新動向を掴むなら「週刊 経営財務」を読むのがいいでしょう。おそらく経理部内で定期購読しているはずです。
https://www.zeiken.co.jp/mgzn/zaimu/

自社の会計ルール

自社の経理部門が採用している会計基準を把握しましょう。
日本基準、IFRS、米国基準のどれを採用しているのかは、配属してすぐに教えてもらえるでしょう(何も説明がなければ日本基準です)。
また、特定の業種であれば、業法などによって会計方法が決められていることもあるので理解しましょう。
銀行業、保険業、証券業、建設業、電気業、ガス業、鉄道業などは独自の勘定科目を使って財務諸表を作成することが定められているため、簿記で学んだ知識にこれら業種別の決まりも学ばなければいけません。

経理規定も読むことも必須です。
会計基準の中で複数のやり方が選択できる場合、経理規定の中にどの方法を使って処理するのかが記載されています。
例えば、棚卸資産の評価方法(総平均法、先入先出法、売価還元法など)、固定資産の償却方法(定額法、定率法)、引当金の計算方法、原価計算のやり方(個別原価計算、総合原価計算、実際原価計算、標準原価計算)など会社が選択しなければならない処理について明記されているので、これらは早めに把握しておくことが重要です。

税務

確定申告書を作成する担当にならなくても基本的な税金の知識は必要です。
最も必要なのは法人税の知識でしょう。
交際費かそうでないのかの区別はもちろんのこと、寄附金の扱いや引当金の処理が税金計算上どのように処理されているか把握する必要があります。
また、税効果会計を適用するためにも法人税の知識は必須となります。

消費税、固定資産税、所得税(特に源泉徴収)あたりも自分が担当ではなくても基本的な知識はあった方が良いでしょう。

法人税の入門書としてこれをお勧めします。対話式なので初心者でもスラスラと読めてしまいます。しかも毎年改版されているので、最新の税制にしています。

さらに詳しく知りたい場合は同じ著者のこちらを読むとよいでしょう。対話式ではありませんが、上の入門編と同じレイアウトで説明されているので続けて読むと法人税の知識がかなり身につくと思います。

英語

海外とのやり取りが多い場合は勉強しましょう。
語学の学習はとにかく時間がかかるので毎日コツコツと勉強していかなければいけません。
もし海外と全くかかわらないようであれば、思い切って諦めても良いかと思います。
転職時にTOEICスコアが要件となっている場合もあるので、そのあたりも考えて学習する・しないを決めてください。

英語の勉強は改めて別の記事で紹介する予定です。ここでは私にとって最も役立った教材を紹介しておきます。有名なので皆さんご存知だと思います。この本を真剣に取り組む前と後ではTOEICの試験が全く別のもののように感じました。オススメです。

IT

今時の経理はシステムがないと全く仕事になりません。
システム周りに強いと、いざトラブルになったときに重宝がられます。
ここでいうシステムの知識は、会計ソフトの使い方ではなくシステム構成の理解やバックアップの仕組み、災害対策のための冗長化の理解などです。
IT部門と会話をする場合やソフト会社のサポートと会話をする場合、とにかく専門用語がたくさん出てくるので相手の言っている意味を理解するのが大変です。
しかし、システムが止まると経理の仕事も止まるので日ごろからシステムへの理解も進めてください。

ITエンジニアの視点から見た経理システムのお話です。経理が読んでも難しく感じることがないくらい分かりやすく書かれています。システムに強い経理を目指すなら読んでみてください。

Accessなどを利用したDB操作

Excelでさばき切れないほど大量のデータを扱う場合にはDB操作が必要となります。
場合によっては、経理がSQLを叩いてDBから必要な情報を取得することもあり得ます。
必要になったときに覚えればいいのですが、この辺りを詳しくなっておくと数時間かかった作業が数分で完了してしまうといった効率化が可能になったりします。

ACCESSに関して私は本を買ったことがありません。触りながらWebで見よう見まねで何とか乗り越えてきた感じです。読んでない本はお勧めできないので割愛させていただきます。

ファイナンス

会計の周辺領域の知識も知っておくと役立つことが多々あります。
有価証券の評価や減損、資産除去債務などで使われる割引現在価値の使い方は、ファイナンスの教科書に詳しく書かれているので目を通しておくとよいでしょう。
資金調達など財務的な仕事を行う場合にも役立ちます。

ファイナンスの入門書ならこれで決まりです。安くて持ち運びも便利なので、通勤時間に読むことができます。

入門書では物足りない場合はこちらをどうぞ。

会社法

増資・減資、配当、子会社の設立・清算などが頻繁に発生する場合には会社法を知っておいた方が良いでしょう。
このような純資産の部の動きは会社法に細かいルールが記載されているためです。
法務部門などに詳しい人がいるならばその人に任せてもいいかもしれません。

私はこの初版を買いました。入社して2年目に会社法が施行され、勉強のために買った記憶があります。

まとめ

以上、私の思いつく限り経理の仕事として必要な学習領域を挙げてみたわけですが、どんなに優秀な人でもこれら全てを完璧に知っている人などいません。
どれも基礎知識を身に付けることは必要ですが、すべてのエキスパートになる必要はなく、状況に応じて詳しい人や専門家に尋ねればよいのです。

まんべんなく知識を身に付けようとすると個性がなくなり、転職する際に自分の専門分野がハッキリ言えず受けが悪くなることもあります。
何でもできる人よりも、この分野では誰にも負けない人の方が、採用する側は判断しやすいため前者よりも内定を出しやすいのではないでしょうか。

上に記載したような経理に必要な知識を眺めることで、自分の強みをどこにあるのか、どの分野をもっと学んだ方が良いのかを考えるきっかけになれば幸いです。